配る前に知っておくこと
このページは、介護施設やデイサービスの職員として利用者さんに配る方、あるいは自宅で高齢の家族に渡そうとしている方に向けて書いています。難易度別のページでは「初級」「中級」とだけ書けば十分ですが、配る枚数を選ぶときはそれだけでは足りません。この10枚は、必要な解き方が唯一候補法だけです。唯一候補法とは、同じ段・列・ブロックにすでに入っている数字を除いていって、残る数字が1つだけになったマスを埋める解き方で、数字どうしを組み合わせて考える手筋は使いません。10問すべてを実際に解き直して確かめてあり、隠れ唯一候補法もロックされた候補も出てきません。途中でどうしても手が動かなくなる、という展開が起きにくい束です。
レクで配る紙にいちばん求められるのは、渡した後に嫌な思いをさせないことです。難しすぎて手が止まれば、その日の時間がその人にとって気まずいものになります。この10枚を選ぶ理由はここにあり、易しく見せかけているのではなく、唯一候補法だけで最後まで届くことを確認したうえで配れる束にしています。
1枚あたりは、5分程度で終える目安で作っています。デイサービスの午後のレクや、施設の集団活動の合間に挟める長さです。ただしこれはあくまで目安で、実際にかかる時間は1人ずつ違います。早く終わる人と時間のかかる人が両方出ることを前提に、次の段取りを組んでください。
配る前に確認しておきたいのは、この3つで十分です。かかる時間の目安、紙の文字の大きさと作り、そして答え合わせの段取り。ここから順に説明します。配る職員自身がナンプレに詳しい必要はありません。解答の別紙と見比べるだけで、答え合わせはできます。
紙の作り
この10枚は、通常のナンプレの版面をそのまま縮小コピーしたものではありません。3つの点を、高齢者に渡すことに合わせて変えています。
マス目を大きく取っています。1マスは18.5mm角で、通常の版面(17mm角)より一回り大きく、罫線も太くしてあります。盤の下に刷ってある「ヒントの数」と「難易度」は14ptです。少し離れた位置から見ても、老眼鏡ごしでも読み取れる大きさを優先しました。マスの周りにも余白を広めに取っていて、片手で紙を押さえながらもう片方の手で書き込めるようにしています。
配るPDFを実際に測ると、こうなっています。盤の数字が29.4pt、見出しが16pt、盤の下の「ヒントの数」「難易度」「必要な解き方」がそれぞれ14pt、「こたえは別紙にあります」が11pt。 ここまでが解く人の読むところです。これより小さいのは、名前欄の見出し(7.5pt)と、最下部に刷ってある配布元と利用条件の2行(7pt・6.5pt)だけで、解くのに読む必要はありません。
1枚に1問だけを配置しています。1枚に複数問を詰めると、どの問題から手を付けたかが分かりにくくなり、途中で別の問題の欄に数字を書き込んでしまう間違いも起きます。1枚1問にしておけば、今日はこの1枚と決めて渡せます。終わった紙はそのままその人の1枚として持ち帰ってもらえるので、他の人の問題と混ざる心配もありません。
解答は別紙にしていて、問題の裏面には印刷していません。裏に答えがあると、光にかざしたときや紙が薄いコピー機で透けて見えることがあります。答えが先に見えてしまうと、渡す側にその意図がなくても「解けなかった」という結果だけが残ります。解答を別紙に分けているのは、この事故を避けるためです。
文字の大きさも、1枚1問にすることも、解答を別紙にすることも、すべて高齢者に配るという用途に合わせて決めた版面の条件です。こうした紙のパズルは、手指を動かす活動として介護の現場で使われています。鉛筆を持って数字を1マスずつ書き込む、その動作そのものがこの10枚の目的です。
レクで使うときの段取り
何枚刷るかは、参加予定人数に予備を2〜3枚足すのが目安です。早く終わった人にもう1枚渡せるようにしておくと、待ち時間を持て余さずに済みます。予備は同じ束の中の別の1枚で構いません。10枚あれば、1回のレクで全員に別々の問題を配れます。参加人数が10人を超えるときは、同じ10枚をもう一組刷って組み合わせ、同じ問題が重ならないようにしてください。
始める前に「今日は数字を1つずつ入れていくパズルです」と一言添えておくと、初めて渡された人でも身構えずに取りかかれます。
15分の枠であれば、配布に1〜2分、書き込みに5〜8分、答え合わせに残りを充てる組み方が扱いやすいところです。配るときは、上部に名前や日付を書く欄を用意しておくと、あとで本人に返すときに迷いません。筆記具は鉛筆と消しゴムを用意しておくと、書き間違えても同じ紙のまま直せます。
先に終わった人を急かさないことも大事です。10問とも唯一候補法だけで解けるとはいえ、数字を書き込む速さには個人差があります。時間内に終わらなかった分は、その場で切り上げて持ち帰ってもらうか、次のレクに残しておくかのどちらかで構いません。
答え合わせは、解答の別紙を職員側で持っておき、終わった人から順に声をかけて一緒に確認する形が扱いやすい方法です。全員が同時に終わるとは限らないので、答え合わせの時間をあらかじめ区切らず、その場で1人ずつ対応する組み方にしておくと、レク全体の時間が崩れません。本人どうしで確認し合いたい場合は、2人1組になって解答の別紙を見比べてもらう方法もあります。
もう少し手がかりを絞った盤面を試したくなったら中級、通常サイズの版面で同じ「唯一候補法だけ」の難易度を確認したいときは初級も用意しています。候補の消し方から見直したい方にはナンプレの解き方 基本テクニックが図を使わず文章で説明しています。配ってよい範囲は利用規約にまとめています。
この盤面はどう作っているか
この10枚を作る過程で調べた組は530でした。そのうち266組は元の数字に戻していて、9割にあたる241組(90.6%)は答えが2通りになってしまうという理由、残り25組(9.4%)は「唯一候補法の範囲を超える」という理由でした。完成した盤面を最初から作り直したことは、この10枚では0回です。
戻した理由のほとんどが「答えが2通りになる」であって「唯一候補法では足りなくなる」ではなかった、という比率は、この10枚では唯一候補法という上限そのものにはあまり近づいていなかったことを示しています。数字を1組抜くたびに答えが割れていないかを数え直し、唯一候補法だけで最後まで届くかを解き直す。この作業を530回に分けて繰り返した結果が、この10枚です。検算のしかたや、他の種類・難易度に共通する仕組みは問題・線画の作り方にまとめています。